3/18(金)追加の超音波検査2回目@ナインウェルズ病院。もう正規産に入ってるし、このスキャンが必要なのかどうかいまいちわからないまま、朝8時半に病院へ。超音波検査はいつも通りスムーズに進み、技師さんには「赤ちゃんはちゃんと成長している」と言われ、ひと安心。そのまま結果を持って、antenatal clinicへ。ここでお医者さんが結果を見てコメントしてくれます。
診察室に通されて助産師さんから伝えられたのは、「赤ちゃんは正常に成長しているが、羊水の量が下限ギリギリなので、ドクターは陣痛促進induction of labourによる出産をすすめている」ということでした。前回と同じく「正常だから帰っていいよー」というのを期待していた我々はしばし呆然。予定日まであと2週間なのに促進剤を使わなきゃいけない理由がわかりませんでした。
動揺する妻の通訳をしつつ、なぜ陣痛促進が必要なのか詳しい説明をお願いしました。すると、3週間前のスキャンから羊水量がだいぶ減っていて、いまや正常値の下限に達しているので、このまま減り続けると赤ちゃんが危険かもしれない。来週の月曜日まで待って、もう1回スキャンしてもいいけど、そのとき羊水量が下限を下回っていたら、緊急帝王切開になるかもしれない。それよりは、なるべく早く陣痛を誘発して、自然に分娩したほうがいいと思う、ということでした。
「ちょっと考えてみてね」と陣痛促進に関する小冊子を置いて、助産師さんは部屋を出ていきました。私たちの頭には、「もうちょっと待てば自然に陣痛が来るんじゃないのか」「でも待ったら赤ちゃんが危ないかもしれない」などがぐるぐるしていました。お医者さんが「こうしなさい」というのではなく、全部こちらで決めさせてくれるので最終的には良いのですが、なかなか簡単に決められることじゃないですね…。
助産師さんが戻ってきたので、なるべく自然に出産したいということを伝えたところ、今から手で子宮を刺激してみて、陣痛が誘発されるか試してみようか、とのことでした。membrane sweepと言っていたのですが、子宮口に指を入れて、羊膜を子宮から剥離することのようです。こうすることで、ホルモンの分泌が促され、陣痛が誘発されることがあるそうです。妻いわく、ものすごく痛かったらしいですが…。子宮口はすでに1~2センチ開いていて、赤ちゃんの頭もよく下がってきているとのことでした。
促進剤を使う日については、なるべく早く陣痛を誘発させたほうがいいとのことで、最も早い日程をチェックしてくれたのですが、日曜日の夕方に来てくださいと言われました。私たちのリアクションは「2日後か…」でした。まずはProstinというホルモン剤の膣錠で陣痛の誘発を24時間試みるそうです。この間は妻は病院に入院している必要があります。それでも陣痛が来なかったら、人工的に破水させてみて、それでも来なかったらホルモン剤の点滴になるとのことでした。出産を経験しているので、すぐに陣痛来ると思うよ、とのことでしたが…。
水中出産を希望しているんだけど、と言ったところ、破水させる前に陣痛が誘発されれば、そのままmidwifery unitに移って出産できるよ、と教えてくれました。なので、最初の24時間に陣痛が来ることを祈るしかないようです。「fingers crossed!」と診察室を送り出されました。
そんなわけで、家族3人で過ごすのは最後の週末になりそうだったので、夕食はシティセンターにある娘のお気に入りの中華ファミレスに行きました。家に帰ってきて、いつも通り寝ようとしたところ、夜11時頃に妻が「周期的にお腹が張っている」と言い出しました。まあ前駆陣痛かもね、と言いながら寝たものの、午前1時半頃には規則的な痛み=陣痛に変わったようで、間隔も3〜5分と短く、これは間違いなく陣痛がきている、ということになりました。
3/19(土)陣痛が始まったときは、まずMaternity Triageという24時間対応している番号に電話して、指示を仰ぐことになっていました。午前2時ごろに電話したところ、妻と話したいと言われ、電話を替わりました。まだ家で待機しろと言われると思っていたのですが、意外にも「すぐ来ていい」ということでした。熟睡している娘に靴下をはかせ、用意してあった入院セットと娘のお泊りセットを持って出発。まずは、日本人のご一家のところに寄って、娘を預けました。ちょっと目を覚ましたのですが、泣くかと思いきやにっこり笑って手を振ってくれたので、ひと安心。前もって心の準備をさせておいたのがよかったようです。
それからナインウェルズ病院にあるDundee Midwifery Unit(DMU)へ。午前3時ごろ到着。病院の駐車場とは違うところに車を停めないといけないのですが、事前に練習した成果もあって、スムーズにたどり着けました。すぐに当直の助産師さんが診察してくれて、子宮口はまだ2センチしか開いていないので、帰りたければ帰ってもいいけど、二人目だから一気に陣痛が進む可能性もあるね、と言われました。私たちとしては、また帰って戻ってくるのも大変そうだったので、DMUにいさせてもらうことにしました。事前に聞いていた話から、ぎりぎりまで分娩室には入れないような印象をもっていたのですが、私たち以外には1人さっき出産が終わった人がいるだけだということで、比較的空いているのもあったのかもしれません。
日本の産院でよくある陣痛室、分娩室のような区別はなく、Birth Roomという部屋に最初から最後までずっといます。かなり広い部屋で、バランスボールや椅子、ベッドがあり、専用のバス・トイレ付きです。午前4時ごろ、Birth Roomに入りました。まずは「お茶かコーヒーでもいかが?」と聞かれました笑 とりあえず水でいいと言うと、水とバナナとりんごを持ってきてくれました。このころは、陣痛はまだそれほど強くなく、3分間隔ぐらいでした。
1時間ごとに助産師さんが赤ちゃんの心音のチェックをしに来てくれました。長女のときには、お腹に巻くモニターのようなものを装着していましたが、こちらではそれを使うには産科医が常駐するLabour Suiteに行かないといけないとのことでした。羊水量が下限ギリギリということと、赤ちゃんの成長が不十分な可能性があるということで、助産師さんが産科医に水中出産できるか聞きにいってくれて、結果的にOKがでました。午前6時すぎ、だいぶ陣痛が強くなってきたころ、助産師さんが隣のBirth Roomにある水中出産用のプールにお湯をため始めてくれました。30分ぐらいでたまるとのことでした。
午前7時半ごろ、隣のBirth Roomに移動。妻は下半身は何も着ずに、上半身には水着の上を着てプールに入りました。着るものはなんでも良いそうで、全裸でもいいし、お気に入りのTシャツでもいいし、という感じでした。プールと言っても直径2メートルぐらいの円形のお風呂みたいなもので、座ると首までお湯につかるぐらいのお湯がはられていました。水中でも使える携帯の心音モニターで、助産師さんが定期的に赤ちゃんの心音をモニターしてくれました。午前8時で当直のシフト交替だそうで、助産師さんが交替しましたが、以前の検査で来院したときに一回会ったことのある人で、なんとなく安心感がありました。
それからしばらくは、強い陣痛のあと2分おいて弱い陣痛、4分おいて強い陣痛、というサイクルを繰り返していました。痛み止めがわりに笑気ガスを使えるのですが、試せるものはなんでも試しておこうということで、使わせてもらいました。妻いわく、ふらふらするだけでほとんど意味がなかったそうです笑
午前8時半ごろ、プールに入って1時間ぐらい経ったころ、助産師さんに、「ずっとプールに入っているわけにもいかないから、11時半までに動きがなければ、一旦プールから出て、内診などでお産の進行をチェックさせてもらう」と言われました。3時間後ってなかなか微妙なところだな、と思いましたが、そこから妻の陣痛は一気に強くなり、そんな心配は全く不要でした。第一子の出産経験をもとに、いきみたくなるような陣痛がきても、しばらくはいきまずに逃さないといけないと思っていたのですが、助産師さんに「いきんでもいいんですか?」と聞いたところ、(あなたは何を言っているの?)という表情で、「いきみたくなったらいきんでください」と言われました笑
そこから必死にいきんだ妻。プールでは身体が浮いてしまうので、足が反対の壁に届かない妻は、力が入りにくそうでした。私は妻の頭側にいて、妻の頭が水に沈まないように支えていました。午前9時10分、頭の先端が出てくるのが見え、頭全部が出たと思ったらぐるっと回転して顔がこっちを向き、全身が一気に出てきました。水中で赤ちゃんは口をパクパクしていましたが、水から引き上げられると元気よく泣き出しました。へその緒もついたまま、助産師さんが赤ちゃんに毛糸の帽子をかぶせてくれ、冷えないように身体にタオルをかけた状態で妻に抱かせてくれました。小さいですが、元気な女の子でした!
しばらくしてから、へその緒に2か所クランプをして、その間を切ってくださいとハサミを渡されました。「太いへその緒だね!」と助産師さんに驚かれました。私がへその緒を切る、というのは事前に相談して決めてあったことで、貴重な体験ができました。助産師さんが、「スプラッシュしないように…」と言って手をかぶせてくれて、何のことかわからなかったのですが、ハサミを入れた瞬間に血がすごい勢いで飛び出て、私の顔や服にかかりました笑
赤ちゃんが小さい可能性があるから体重を測ってもいいか、と聞かれたのでもちろんOKしました。このように、生命維持に必要なこと以外は基本的に事前に許可を求めてくれます。体重は2510グラム。2500グラム以下の場合には追加の検査がいろいろ必要だったようで、「ぎりぎり大丈夫だったね!」と言われました。妻はへその緒の残りを垂らしたまま、プールから出てベッドに移動しました。結構出血していたので、部屋の至るところが血まみれになっていました。胎盤が出るのを促進する薬を太ももに筋肉注射してもらい、午前9時35分、胎盤が出ました。
色々なチェックをしてもらって、「身体は小さいけどとりあえずノーマルよ!おしりにあるのは蒙古斑かしら?」と言われつつ、赤ちゃんを妻に渡して、skin to skinのコミュニケーションの時間を作ってくれました。ここで初めて授乳することが結構重要らしいです。長女のときにはやらなかったなーと思いつつ、まあこれもいい経験でした。
午前11時ごろ、妻の会陰部の裂傷を縫うべく、向かいのBirth Roomに移動しました。こちらには、日本の分娩台のようなものがあって、その上で縫合しました。笑気ガスの吸入口が置いてあったので、まさか麻酔しないのか?と思って聞いたところ、「ちゃんと麻酔するから安心して」と言われました。実際、かなり念入りに麻酔の注射をしていたように思います。縫合も時間をかけてかなり丁寧にやっていました。そのおかげもあってか、今回は前回と比べて傷口の痛みはだいぶ軽いようです。
縫合完了後、車椅子に乗せられてpostnatal areaという4床の病室に移動。赤ちゃんも一緒に移動。まずは「ふたりともトーストでもいかが?お茶かコーヒーどちらがいい?」とのことで、ありがたくいただくことにしました。ただのバター付きトーストにジャムでしたが、妻はここで食べたトーストがとてもおいしく感じたそうです。赤ちゃんはもうずっと隣にいるので、泣けば授乳するし、いきなり子育て開始です。二人目ということもあってか、助産師さんも定期的に様子を見に来るものの、それほど手厚く指導したりはしないようでした。
午後1時ごろ、「ランチにサンドイッチいかが?トマト・チーズかターキーか」と聞きにきました。これはさすがに妻のぶんだけでしたが笑 昼食を持ってきてくれる間に、妻はシャワーを浴びにいきました。これもなかなか日本では考えられないことですが、実際妻は意識が遠のいてしばらく椅子に座っていたそうです。妻がシャワーを浴びている間に、「聴力検査をさせてもらってもいいですか?」と聞きにきたので、やってもらいました。これは、生後すぐに耳にイヤーピースを挿入して、そこから微弱な音を出して、内耳から反射して返ってくる音を検出することで、正常な聴覚を確認する検査らしいです。
赤ちゃんの左耳はOKでしたが、右耳は反応が悪く、3週間後にまた病院に来て再検査と言われました。この段階での再検査はよくあることだそうで、特に生まれた直後は耳管が粘液でふさがっていることがあるらしく、時間がたてば開通するので問題ない、と言われました。
そのうちにヘロヘロの妻が戻ってきたので、とりあえずお互いに休息をとろうということで、私はいったん家に帰りました。妻の血まみれの下着や水着を選択してから昼食を食べて1時間弱仮眠して、午後4時ごろ娘を迎えにいきました。初めて両親と離れて長時間過ごしてさすがに寂しかったようで、強がってなるべく普通にふるまってはいましたが、戸惑いが明らかに見えました。「夜もまたお泊まりして夕飯いっぱい食べる!」と言っていたので楽しかったのは間違いないようのですが。夜も熟睡しているところを起こされ、朝も早く起きてしまって眠気も限界だったようで、車で病院に戻る10分ぐらいの間に眠ってしまいました。
午後5時ごろ病室に戻り、長女を妻のベッドに寝かせました笑 「夕食にビーフシチューかcasseroleはいかが?」ときたので、ビーフシチューを頼みました。しばらくすると娘が目覚めて、妹との感動の対面。照れくささと恥ずかしさと好奇心と、色々な感情がぐるぐるしているのがよくわかりましたが、しばらくするとだいぶ慣れてきて、頭をなでてみたり、膝に抱っこしてみたり、楽しんでいました。
妻と次女は病院に一泊するか、と話していたのですが、予想以上に妻が元気なので、みんなで退院してしまおう!ということになりました。助産師さんに伝えたところ、退院前の検査ができる人が夜8時にならないと来ないので、それまで待てるか、と聞かれました。待てない場合には、翌日に病院に来てもいいということでしたが、それも面倒なので、8時まで待つことにしました。
結局、その検査が終わったのが9時ごろで、次女のbirth registration用の書類などをもらって、DMUをあとにしました。即日退院なんて信じられない!と思っていましたが、お産の具合と妊婦の体力次第では可能なようです。生後12時間の次女をチャイルドシートに寝かせ、おそるおそる運転しながら家に帰りました。レトルトカレーの夕飯を済ませ、夜11時ごろにはなんとか就寝。長かった一日がようやく終わりました。
そんなわけで、第二子が誕生しました!予定日よりは11日早かったですが、促進剤による出産は回避できたし、出生記録のdeliveryの欄にもspontaneousと書かれていたので、membrane sweepをしてくれた助産師さんに感謝したいと思います笑 二人の娘の父になり、責任もますます重大ですが、子どもがとてつもなくかわいいというのは長女で経験済みなので、楽しんで子育てしようと思います。長女と次女がどんな姉妹に育つのかも楽しみです。娘を預かってくださったKさんご一家にはとても感謝しています。それから、イギリスでの出産という大仕事を成し遂げた妻を誇りに思います。いまの職場では、産後は夫は2週間休みをとるのが当たり前、という雰囲気で、所長であるボスもまったく何の問題もなく休みを取らせてくれたので、ありがたく家事に専念しようと思います。