国民投票

6/23(木)、イギリスのEUからの離脱を問う国民投票が行われました。大方の事前の予想はEU残留でした。世論調査が直前まで競っている場合、保守的な選択肢が勝つ傾向にあると思うので、私もEU残留だろうと思っていました。ところが、朝起きて驚いたことに、イギリス国民はEU離脱を選択しました。離脱が52%、残留が48%ということで、実に120万票もの差をつけての離脱決定です。

せっかくイギリスに住んでいるので、概要をまとめておきます。

今回の国民投票で投票権があったのは、18歳以上でイギリス国内および英領ジブラルタル在住のイギリス市民、アイルランド市民、コモンウェルス市民です(「市民」は"citizen"の訳です)。イギリス国外在住のイギリス市民でも、イギリス国内の住所で過去15年に投票者登録をしたことがある場合には投票権があります。

投票は、"Should the United Kingdom remain a member of the European Union or leave the European Union?"(英国は欧州連合の一員として残留するべきか、欧州連合から離脱するべきか)という質問に対して、"Remain a member of the European Union"もしくは"Leave the European Union"を選択する方式です。

イギリス全体として見ると離脱派が勝ったわけですが、スコットランドでは全投票区で残留支持が上回り、スコットランド全体では62%が残留に投じました。対照的に、イングランド・ウェールズでは53%が離脱を支持しました。スコットランドとイングランドでは投票総数が10倍くらい違うので、スコットランドの残留支持票では焼け石に水だったという感じです。これを見ると、なんでスコットランドとイングランドが同じ国にいるんだろうかと思いますね…。

研究者はスコットランド、イングランドを問わず残留支持が多かったと思います。イングランドでも、学園都市で研究者が多く投票したと思われるケンブリッジ、オックスフォードなどでは残留支持が圧倒的に上回りました。EUからの学生やポスドクなどの人材や、試薬・機器の流動性が下がること、EUの研究資金に自由にアクセスできなくなること、などなど離脱に伴う問題は山積みです。

一方、イングランドで農業や漁業などを主要な産業とする多くの都市では、離脱支持が多数になったようです。原因として、EU内の東欧などから安い労働力(おまけによく働く)が単純労働市場に大量に流入してイギリス人の仕事を奪っているうえに、医療や学校などの公共サービスを麻痺させている、というのがあるようです。批判すべきはイギリス政府の無策のはずですが、この際ずっと気に食わなかったEUから抜けてやれ、という感じなんでしょうか。

スコットランドでなぜ残留が支持されたかは定かではないですが、前回のスコットランド独立を問う住民投票でも、独立派の主張のひとつとして、独立後にEUに加盟する、というのがあったので、もしかしたらイングランドと連合するぐらいなら大陸欧州と連合する、という感覚なのかもしれません。また地理的にも大陸から遠く、移民問題がそれほど深刻でないのかもしれません。今回の結果を受けて、イギリスがEUから離脱するのなら、スコットランドは再び独立を目指すという議論が真剣にされているので、将来的には「スコットランドは私が住んでいたころはイギリスだったんだけど…」ということになるのかも?

研究所のイギリス人は、朝ラボに行くと一様にショックを受けた様子でした。ただ直前のSNSなどの雰囲気から、離脱派が勝つ可能性は感じていたそうです。最近のイギリス議会の総選挙でも、離脱派がかなり票を取っていたのを思い出します。ラボにはドイツ、スペイン、ギリシャ、イタリア、フランス、ポーランド、クロアチアなどから多くの学生やポスドクが来ていますが、彼らもこの先どうなるんだろう、と不安そうでした。そもそもEU外からビザを取ってきている私たちは傍観者なわけですが、離脱派の勝利が確定してポンドが一気に下がったので、ポンド預金はしばらく塩漬けですかね…。あとは、大陸欧州から輸入している物が多いので、生活レベルにどのぐらい影響が出るか、によりますが。


離脱確定後のSNSでシェアされてくる大陸欧州から来ている人々のメッセージを見ると、「私たちはもはやUKで歓迎されていない」とかいう鬱っぽいのが多いです。もっと現実的に「次の契約更新は無理かも」とかもありますが…。ただ、イギリス政府は以前から、私たちのような合法的な移民ですら、特殊技能とか納税とかでイギリスによっぽど貢献できる奴は入ってきてもいい、そういう奴は金は持ってるだろうから手数料は高めにしておく、という姿勢なので、大陸欧州の人たちが「イギリスは変わってしまった」と思うとすれば、それはなんか違うなー、と思います。まあとばっちりに近いような感じで、歴史的にも地理的にも民族的にも近い存在から拒否されるのはショックなのかもしれませんが。

さて、離脱決定を受けて、イギリス政府は2年かけてEUと離脱の協定を作るそうです。キャメロン首相は10月に辞任するそうですが、後任選びどうするのかなーと思います。日本から興味深く見守ろうと思います。
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by genta_ito | 2016-06-24 08:00 | ダンディー生活

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